『事例でレベルアップ年金相談Q&A』
社会保険研究所

サンプルを掲載いたしました。
『事例でレベルアップ年金相談Q&A』社会保険研究所

Q 被用者年金一元化後の受給資格
 昭和30年12月12日生まれのB夫さんは大学卒業後、郵便局に勤務しましたが、60歳年度末で再任用職員として厚生年金に加入しました。被用者年金一元化後のB夫さんの共済年金はどうなりますか。再任用後の厚生年金についてはどうなりますか。

 昭和30年12月12日生まれの方の共済年金・厚生年金の受給開始は62歳ですから、平成29年12月11日が受給権発生年月日です。B夫さんは大卒後の昭和53年4月1日に資格取得、60歳年度末の平成28年3月31日に退職、平成28年4月1日に資格喪失すると共済組合員期間は456月になります。一元化前(平成27年9月まで)の月数は450月、一元化後の月数は6月です。再任用後62歳までの厚生年金期間は20月です。B夫さんが62歳から受給する年金は被用者年金一元化によって、共済年金の報酬比例部分は「第2号特別支給の老齢厚生年金」として456月分、共済年金の職域加算部分は「経過的職域加算部分」として450月分が、それぞれ国家公務員共済から支給されます。厚生年金は「第1号特別支給の老齢厚生年金」として20月分が日本年金機構から支給されます。

Q 被用者年金一元化後の加給年金額の加算
 昭和24年6月生まれ男性です。年金加入歴は厚生年金15年、国家公務員共済15年です。被用者年金一元化により、加給年金額は何歳から、どちらの年金に加算されますか。

 複数の厚生年金期間を合算する判定は、一元化施行日に行うのではなく、施行日後に次の①~④に該当した場合に行います。
① 老齢厚生年金の受給権が発生する場合(通常65歳)
② 退職改定が行われた場合
③ 離婚分割が行われた場合
④ 社会保障協定による年金額改定が行われた場合
 事例の方は、60歳時(平成21年6月)に特別支給の老齢厚生年金と特別支給の退職共済年金を受給し、65歳時(平成26年6月)から老齢厚生年金と退職共済年金を受給しています。60歳時・65歳時ともに「被用者年金一元化前」であるため、期間の合算は行われません。施行日(平成27年10月1日)以降も加給年金額は加算されません。一元化後に上記①~④に該当した場合は、その翌月から加算されます。

Q 繰下げ待機中に夫が死亡
 現在、67歳の女性が、70歳から老齢基礎年金を繰り下げて受けるべく待機中です。夫は68歳で老齢基礎年金と老齢厚生年金を受給していますが、妻が繰下げの請求をする前に夫が亡くなった場合、年金はどうなりますか。

 繰下げ受給を待機している人が、66歳以降に他の年金給付の受給権が発生した場合、その年金給付の受給権が発生した時点までの繰下げが認められ、①65歳からの本来の老齢基礎年金を遡及請求するか②その時点での増額された繰下げ受給の老齢基礎年金を選択するか、の選択ができます。(国年法28条②)この女性の場合も①か②の選択による老齢基礎年金と夫の遺族厚生年金を受けられます。なお、66歳前に新たに遺族厚生年金の受給権が発生した場合は、繰下げ請求はできません。65歳以降、本来の老齢基礎年金と遺族厚生年金の併給となります。

Q 離婚分割後、年金受給前に元配偶者が死亡
 離婚分割の相談に来た専業主婦の女性から、「離婚分割をした後、私が年金を受給する前に元夫が亡くなった場合はどうなるのか」と質問を受けました。どう答えればよいですか。

 離婚分割によって分割された厚生年金保険の納付記録は、元に戻ることはありません。たとえ、年金受給前に分割をした元夫が亡くなっても、分割を受けた元妻が再婚したとしても、分割後の記録に基づいて年金が受けられます。ただし、元夫が亡くなっても、元妻に遺族年金は支給されません。遺族年金が受けられるのは、亡くなった当時に生計を維持されていた遺族です。仮に離婚と再婚を繰り返し、そのたびに離婚分割をした場合、それぞれの相手との婚姻期間や分割割合に応じて納付記録が改定されます。将来の老齢厚生年金や遺族厚生年金は、すべての分割が反映された納付記録に基づいて年金額が計算されます。

Q 障害年金の額改定について
 障害基礎年金や障害厚生年金の受給権者は、障害の程度が悪化した場合または軽くなったときは、現況届の審査による等級改定のほか、受給権者本人からの請求により額改定の請求をすることが可能です。従来、額改定請求は、受給権を取得した日または日本年金機構の審査を受けた日から1年を経過しなければ行えませんでした。しかし、年金機能強化法の施行により、平成26年4月以降、明らかに障害の程度が悪化した場合は、1年の待機期間を待たずとも額改定請求が行えるようになりました。額改定請求は具体的にどのような基準になっているのですか。また、精神疾患も同じ扱いですか。

 1年の待機期間を待たずとも額改定を行える規定が、厚生労働省令の別表で規定されています。(平26.3.31 厚生労働省令41)。その中で、国民年金法・厚生年金保険法の障害年金該当者について、
○ 両眼の視力の和が0.04以下となった場合
○ 両上肢のすべての指を欠いた場合
○ 両下肢を足関節以上で欠いた場合
○ 心臓を移植した場合または人工心臓(補助人工心臓を装着した場合を含む)を装着した場合
○ 人工呼吸器を装着した場合(1か月以上常時継続した場合に限る)
○ 人工肛門を造設し、かつ尿路変更術を施した場合(人工肛門を造設した状態および尿路変更術の施行が6か月以上継続した場合に限る)
などと具体的な基準を規定しています。しかし、精神疾患については一切規定されていないため。額改定請求は従来どおり1年の待機期間を経過してから行います。

Q 交通事故で植物状態になった場合の障害認定日
 会社員のA男さん(昭和44年生まれ)は、現在の会社で13年間働いてきました。平成27年7月14日の早朝、自転車で通勤途中に信号無視の車と交差点で衝突し、救急車で病院に運ばれました。頭部と胸部を強打し、脳挫傷とくも膜下出血を起こしており、集中治療室で治療を受けました。しかし、回復が思わしくなく、平成27年9月20日から遷延性意識障害となり入院中です。医師の話では、脳のダメージが大きく回復の見込みはないとのことです。現在、通勤災害で休業給付を受けています。障害認定日はいつになりますか。

 障害認定日は、原則として初診日から1年6か月を経過した時点です。1年6か月以内の例外としては、①人工透析を受けた場合(透析開始から3か月)②人工弁や心臓ペースメーカーを装着したとき(装着した日)などがあります。これまで脳血管障害により機能障害を残している場合で、医学的観点から、それ以上の回復がほとんど望めないと認められるときは、初診日から6か月経過した時点が障害認定日となっていました。それが、平成26年4月に障害認定基準が改定され、遷延性意識障害(いわゆる植物状態)になり、医学的観点から機能回復がほとんど望めないと認められる場合は、初診日から起算して1年6か月以内の期間に限り、遷延性意識障害になってから3か月を経過した日を障害認定日として取り扱われています。この男性の場合は、平成27年12月20日が障害認定日となります。

Q 息子が死亡した場合
 夫が66歳、妻が58歳で、独身の息子と3人暮らしです。息子は13年前から厚生年金保険に加入しており、主に息子の給料で生活しています。息子が脳出血で入院してしまいました。夫は老齢基礎年金を受給中です。もし息子が死亡した場合の遺族年金はどうなりますか。

 息子に生計を維持されており、息子の死亡当時55歳以上なので、父母ともに60歳から遺族厚生年金が受けられます。ただし、父母ともに健在の場合、遺族厚生年金は2分の1ずつの額になります。この場合、まず66歳の夫が自分の老齢基礎年金とあわせて2分の1の遺族厚生年金を受け、妻が60歳になった時点で、妻自身が残り2分の1の遺族厚生年金を受けます。どちらかが死亡した時点で、父または母が満額の遺族厚生年金を受けることになります。(厚年法59条・65条の2)

Q 自営業の夫婦で妻が亡くなった場合
 平成23年5月1日(夫54歳、妻45歳)に再婚した夫婦です。夫は昭和32年2月8日生まれで、年収は400万円です。妻は昭和41年1月2日生まれで、夫婦でそば店を営んでいました。しかし、妻が持病の糖尿病をこじらせ、平成27年6月1日に49歳で亡くなりました。再婚当時、妻は国民年金の第1号被保険者でした。互いに連れ子がおり、妻の死亡当時、妻の子は15歳、夫の子は13歳でした。互いの養子縁組日は平成24年5月1日です。妻は死亡時までに厚生年金加入期間が2年、国民年金第1号被保険者期間が22年、全額免除期間が1年でした。このケースで夫は遺族基礎年金を請求できますか。

 遺族厚生年金と遺族基礎年金の両方を請求できます。「年金機能強化法」の施行により、平成26年4月1日以降は、子のある夫に対しても遺族基礎年金が支給されるようになりました。まず、生計維持関係をみると、妻の死亡当時、夫は妻と生計を同じくしており、年収が将来にわたって850万円以上(所得では、655.5万円以上)にならないと思われるため、生計維持関係にあります。(国年令6条の4、厚年令3条の10)。妻は国民年金加入中に死亡していて、夫は18歳到達年度の末日までの子と生計を同じくしているため、遺族基礎年金を受給できます。(国年法37条、37条の2)一方。妻は、厚生年金の加入期間と国民年金の保険料納付済期間・保険料免除期間を合せて25年以上になり、老齢厚生年金の受給資格期間を満たしています。(厚年法58条)また、夫は妻の死亡当時57歳で、55歳以上ですので、遺族厚生年金(長期要件)も受給できます。(厚年法59条・65条の2)なお、夫が遺族厚生年金を受けるのは60歳からですが、今回の改正により、夫が遺族基礎年金を受けられる場合は、60歳前にも遺族厚生年金が受給できることになりました。(厚年法65条②)このケースでは、請求した月の翌月分から遺族基礎年金と遺族厚生年金を一緒に受けることができます。

Q 共済組合からの受給者の死亡に関する届出
 私学共済単独の年金を受けていた68歳の女性が亡くなりました。遺族である40歳の息子はどこに死亡届・未支給請求書を提出すればいいですか。母親が受給していた年金は私学共済の退職年金と、そこから生じた老齢基礎年金です。

 単一共済加入者の未支給年金請求先は、被用者年金一元化後も従来どおりです。生計を同じくしていた遺族が、国家公務員共済の単一加入者および私学共済の単一加入者の退職共済年金は共済組合へ、老齢基礎年金は日本年金機構へ、それぞれ提出します。ただし、地方公務員共済の単一加入者の場合は、退職共済年金も老齢基礎年金も、ともに地方公務員共済へ提出します。

Q 旧厚年法の通算老齢年金と新法の遺族厚生年金
 新法の老齢厚生年金を受けていた昭和2年9月23日生まれの夫が平成28年2月19日に死亡し、旧厚生年金保険の通算老齢年金を受けている大正15年3月10日生まれの妻が、新法の遺族厚生年金を受給する場合の年金はどうなりますか。


 65歳以降は、新法の遺族厚生年金+旧法の厚生年金の通算老齢年金の2分の1を受給できます。妻が旧法の厚生年金の老齢年金を受けている場合も新法の遺族厚生年金+旧法の厚生年金の老齢年金の2分の1を受給できます。妻が旧法の国民年金の老齢年金もしくは旧法の国民年金の通算老齢年金を受けている場合は、新法の遺族厚生年金+旧法の国民年金の老齢年金、もしくは旧法の国民年金の通算老齢年金が併給されます。(厚年法38条、法附(60)56条⑥)